戸板女子短期大学の学生84人を対象として、プレゼンテーションに関するアンケート調査を実施した。
「悩んでいることは何ですか?」の問いに対して、形式は自由記載にもかかわらず、緊張にまつわる回答をした人の割合が57.1%と過半数を占めた。
興味深いのは、当アンケートと同じ被験者を対象におこなったプレゼン力を測る試験の結果と照らし合わせると、緊張に悩んでいる人はそうでない人と比較して、プレゼン力が高い傾向を示したことである。つまり、緊張はプレゼンターにとって悪影響を及ぼすものではなく、成果を上げるために必要な要素になり得ることが明らかになった。
調査の背景 - 成果を上げるプレゼンターになるために –
講義をおこなうにあたり、まずは学生たちのプレゼンに対する意識調査を実施した。
一般的にプレゼン力は個人差が大きいとされるが、自分と他人を比較して落ち込む必要はまったくない。自分の特徴を理解してそれを磨くことで、誰もが聞き手に強力な印象を与える唯一無二の話し手になることができるからだ。そこで、第一回目の講義では、各自が現状の課題(どんなことに悩んでいるのか)と理想の状態(どんなプレゼンターになりたいのか)を明確にして、主体的に目標達成を目指すよう指導した。
2つの試験が明らかにしたこと - 緊張とプレゼン力の関係性 –
学生84人を対象に実施したアンケート調査の中で、「悩んでいることは何ですか?」の問いに対して、次のグラフに示す回答が得られた。
こちらから回答を誘導しないよう形式は選択問題ではなく、あえて自由記載としたが、緊張やあがり症に関するものが57.1%と半数を超える結果となった。
さらに、同じ被験者を対象として、プレゼン力を測る試験を実施した。プレゼンの目的は単なる情報提供ではなく具体的な行動変容であり、人を動かすためにはベネフィットを伝えて感情を動かす必要がある。そこで、試験の評価基準は「①聞き手に価値を提供しているか」「②聞き手の感情を動かしているか」の2点に絞り、プレゼンター以外の学生たち一人一人が評価者となって互いに点数をつけ合い、その合計点で順位を決定した。
すると、上述したアンケート調査で緊張に悩んでいると答えた学生の成績は上位に集まる傾向が見られ、緊張の不安がプレゼン力を高める可能性が示唆された。
プレゼンターのあるべき姿 - 緊張してもいい –
多くの人が緊張すると力を発揮できないと考えているが、現実世界は違った。この事実は緊張に悩むすべての人へ勇気を与えるだろう。なぜなら、緊張している方がパフォーマンスは上がり得るからだ。緊張しいでもあがり症でも一向に構わない。むしろ緊張することは当然であり、治したり克服する必要すらないのである。
ビジネスシーンで成果を上げるプレゼンターになりたいのであれば、「緊張したらどうしよう」と意識のベクトルを自分に向けるのではなく、可能な限り相手に集中することが大切であると知ってほしい。当記事が人前で話すことに不安を抱えている人へ届き、緊張に対する考え方が変わり、挑戦する機会が増え、やがては話すことが好きになっていく、そんなきっかけになることを切に願っている。
この記事を書いた人
屋号 :日本つかみ協会
代表者 :森田 翔
事業内容 :個人・法人を問わず、人の心をつかむプレゼンテーションの研修・コンサルティング事業を運営(主催セミナー開催数は年間300回以上、累計受講者数は2,000名を超える)