平成31年度 卒業における学長式辞

小林千春 名誉教授

卒業生の皆様、本日はご卒業誠におめでとうございます。

服飾芸術科181名、食物栄養科155名、国際コミュニケーション学科123名が、晴れて短期大学士の学位を取得されました。本学教職員を代表し心からお祝い申し上げます。

本年度は、卒業式が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を抑止する対応として、各学科やクラス単位での小規模開催となりました。卒業生・保護者の方の健康・安全および社会全体への感染拡大防止を最優先に考えこのような苦渋の決断を致しましたが、入学式のように戸板ホールで、来賓の皆様、保護者の方々と一緒に卒業の晴れがましい門出をお祝いできないことは、心苦しく非常に残念でございます。皆様のご理解、ご協力を賜りましたこと深く感謝申し上げます。

さて、改めて2年前を振り返りたいと思います。

入学式の式辞の中で、私は日本におけるグローバル化の加速が著しく、価値基準を揺るがすような情報がインターネットで飛び交っており、多種多様な選択肢が存在するようになっているとお話ししました。このような社会で、大切なことは、皆さま一人ひとりが、自分で考え、判断し、責任を持った行動がとれる自立した女性になることであるとお話しました。

現在、私たちが直面している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、まさしく加速したグローバル化の副産物であります。世界におけるグローバル化は、私たちの予想をはるかに上回る速度で進んでいることは、中国、武漢で発生した新型コロナウイルス感染症が、瞬時に世界113カ国以上(3月13日現在)にも広がり、特に遠く離れたイタリアでの感染が近隣の韓国や日本のように広がったことからも見てとれます。この感染症拡大状況からも、いかに世界において人々の交流が頻繁になっていたかを目の当たりに致しました。経済活動のグローバル化とともに、人々の交流が活発になれば、地域や国の境界が低くなり、経済が活性化されるとともに、さまざまな新種のウイルスの危険にさらされることが、今後予想されます。

今後皆さんが生きていく社会は、予想外の様々なウイルスあるいは、大規模な自然災害に立ち向かうことを余儀なくされる時代に突入していくでしょう。このような時、皆さんは、この2年間で培った知識、技能、そしてコミュニケーションスキルを駆使し、正しい情報を自分で入手し、選別し、物事の重要度を考え、優先順位を決め判断し行動することが必要です。ある時は、落ち着いて嵐がすぎるのを忍耐強く待つことも必要でしょうし、またある時は、瞬時に行動を移す勇気も必要でしょう。

そして、もう一つ、入学式の時、私は皆さんに2年間受け身でなく、自ら積極的に学んでほしいとお願いしました。皆さんの多くは、学業だけでなく学生会活動、クラブ活動、学生広報スタッフ、ボランティア活動、学生消防団活動などを見事にやり遂げました。

鏡の中には、2年前のあなたと比べ、一回りも二回りも大きく成長し自信を備えたあなたの姿が映っていることと思います。先日の世界経済フォーラムの男女格差(ジェンダーギャップ)の最新報告で、日本は過去最低の121位に落ちました。企業の女性の管理職の割合も131位とさらに低くなっています。「なぜ日本の企業には女性のリーダーが少ないのか」について、朝日新聞が行った女性役員ゼロの企業への質問で、最も多かった回答は、「女性本人の意識改革が必要である」ということでした。また「どんな条件が整えば女性役員が誕生しやすくなるか」という質問に対して、多かった回答は、「女性社員の昇進意欲の向上」であるということでした。

つまり、日本の女性たちが、昇進したくない、管理職になりたくない、つまり責任をとることを望んでいないと考えているために、女性の管理職比率が低迷し、女性リーダーが少ないのである。すなわち女性たちの自己責任いう理屈をつけられているのです。

戸板関子先生は、明治35年に女性の自立を唱え、自ら先進的な教育をすべく学校を設立しました。親からの財産に頼るでもなく、仙台から東京に上京し、この芝公園の地を選び、自力で自分の信念を貫いたのです。明治の時代に成し遂げられたことです。令和の時代を生きる皆さんには、見渡せばより多くの活躍の場があるにちがいありません。何も大企業のリーダーになるだけが立派なのではありません。ライフ・ワークバランスを考え、時代のニーズを読み、ご自分の興味のあることを深めながら、自立の道を歩む、その先にはきっと充実した幸せな人生が広がっていることでしょう。

この戸板女子短期大学で過ごした2年間のすべての経験があなたがたの財産です。私は2年間努力したあなた方を心の底から誇りに思います。

英語で卒業のことをcommencement といいます。これは始まりという意味を持つ単語です。本日をもってあなたがたは戸板女子短期大学を卒業しますが、卒業は決して終わりではありません、新しい人生の始まりなのです。どうぞ自信をもって新しい世界へ羽ばたいていってください。

皆さんの今後のご活躍、ご健康、そしてご多幸を心よりお祈りし、私の式辞とさせていただきます。

最後に、あなた方の人生が実り豊かなものになることを願って、ネルソン・マンデラの言葉を贈ります。

”Everyone can rise above their circumstances and achieve success
 if they are dedicated to and passionate about what they do.”

自分のやることに情熱をかたむけて専念すれば、誰もが自分の状況を超えて成功することができるのだ。

ネルソン・マンデラ


 

令和2年3月14日

戸板女子短期大学
学長 小林 千春


 
 

小林千春 名誉教授

国際コミュニケーション学科

英語コミュニケーション力とICTスキルはグローバル社会に生きるための大事なツールとなります。世界には様々な文化と価値観が存在していることも大切です。楽しみながら一緒に学んでいきましょう。 主な担当科目 >>> Business Conversation:Airline・Airport / 国際マナー