日本全国には、その風土の特色をいかした伝統料理があります。
今では日常的に食される蕎麦は、奈良時代に飢饉に備え蕎麦栽培を奨励されるなど歴史の長い食べ物のひとつです。
蕎麦の食べ方は、最初は殻を取り除いたものを蕎麦米として煮て食べ、その後石臼の普及で挽いて粉にして食べるようになります。粉食として、蕎麦粉の誕生です。蕎麦粉は、や蕎麦練りまた蕎麦団子として食されるようになります。 江戸時代に入り、大陸より蕎麦粉に小麦粉をつなぎとして使用する製法が伝わり、「蕎麦きり」として麺で食べられるようになりました。季節の中でも蕎麦は、節分蕎麦や雛蕎麦や年越し蕎麦、また引っ越し蕎麦など私たちの生活に馴染んできました。今回は、その中で各地の名物蕎麦を紹介します。
1.津軽そば(青森県)
津軽そば は、青森県津軽地方に伝わる独自の手打ちそばです。一般的にそばは、つなぎにそれぞれの特徴にあわせて、小麦粉や山芋、卵などを使います。津軽そばは、つなぎに大豆を使用することが特徴です。主にかけそばとして食されますが製法が独特で難しく今ではお目にかかることが少ない「幻のそば」と称されています。
▼ 津軽そばの美味しさの秘密は大豆の使用?
2.へぎそば(新潟県)
へぎそば は、新潟県小千谷市、十日町市、津南町近辺の名物です。食感は、つるつるとのど越し良いのが特徴です。その秘密は、つなぎにふのりを使用していることにあります。ふのりは、海藻で独特の風味と粘りがあります。へぎそばは、へぎという器に一口ずつ手振りに盛り付けます。
▼ へぎそばと「ふのり」
3.戸隠そば(長野県)
戸隠そば は、戸隠地方の名物で、霧下蕎麦を使用した手打ちそばです。霧下とは、高山の裾をめぐる地帯で霧が発生しやすく、高冷な土地に育つ蕎麦を霧下蕎麦と呼ばれています。霧下そばは、粘度が高いのでつなぎが少なくて打てるのが特徴です。戸隠そばは、二八そば(小麦粉:2 蕎麦粉:8で混合)で打たれるのが一般的です。
4.藪そば・更級そば(東京都)
そばの製法には、蕎麦を製粉するときに、玄蕎麦をそのまま臼にかける田舎そばの作り方とぬき(そば殻の果皮)をとる江戸前そばの作り方があります。 江戸前のそばは、藪系と更級系の二種類があります。藪系は、蕎麦を製粉する時に全粒粉(ひきぐるみ)を使用し甘皮も加わり緑かかったそばとなります。更級系は、さらに未脱穀の蕎麦を取り除き、澱粉質を主体とした蕎麦粉を使用し、白っぽいそばとなります。
▼ 藪そばと更級そば
5.出雲そば(島根県)
出雲そば は、山陰地方で収穫される蕎麦を原料として作られる島根県の名物です。玄蕎麦をそのまま挽き込み、甘皮もたっぷり加わり香味も強い黒いそばが特徴です。ご当地では、わりごという小さな器に盛って食べるので「わりごそば」とも言われます。
谷口 裕信 教授 管理栄養士・博士(食品栄養学)
担当科目 戸板ゼミナール / 食物栄養科ゼミナール / 食品加工実習 / 食品加工学 / フードスペシャリスト論 / 栄養士基礎演習