師走は、1年の最後の月であり、何かと慌ただしい時期でもあります。
「もういくつ寝るとお正月」の声がかかると気になる食べ物
そう!12月31日に食べるものがあります。
「年越し蕎麦(そば)!」
江戸時代には、毎月末にそばを食べる晦日(みそか)そばという風習がありました。これが暮れの31日食べる「大晦日そば」が年越しそばになったという説があります。
天ぷらをのせて暖かい汁で食べたり、ザルにのせて冷たい汁で食べたり、それぞれ好みも多々あると思います。
今年も紅白を見ながら召し上がるか方もおられると思います。
では毎年恒例である年越しそばはどのような謂れ(いわれ)があるのでしょうか?
そのことについて紐解(ひもと)いてみたいと思います。
1、 運そば
そばを食べたら運が向いてきた!
鎌倉時代の事、あるお寺が、生活が苦しく歳をこせない町人に世直しそばと
称してそば餅をふるまいました。その翌年から町人たちに運が向いてきました。それ以来、大晦日に運そばを食べる習慣になったと言われています。実際、
そば(そば切り)として食べられるのはもっと後の時代からです。
別名「運気そば」
2、 細く長く幸せに
そばは、細く長くのびる!
そばは、細く長くのびる性質から家運を伸ばし、寿命を延ばすと縁起をかつ
ぎました。
別名「寿命そば」
3、 歳切りそば
そばは、切れやすい!
そばは、同じ麺類でもうどんと違って切れやすい。
そば粉は、小麦粉のようなグルテンがなく製麺する際には、つなぎが必要と
されます。つなぎとしては、小麦粉が一般的でその他に山芋、卵、ふのり等が使われます。10割そばは、そば粉のみで製麺しますがその技法は難しいです。
切れやすいそばの形状を利用し、1年の苦労や厄災を断ち切る意味をこめて大
晦日に食べます。
1年中の借金を絶ち切る意味で「借銭そば」
しかし、残さずに食べ切らないと借金が残ってしまう!!
別名「縁切りそば」
4、 そばの効能から
そばの成分によって体内を清浄にして新年を迎えられる。また薬味に添える
ネギは、清めはらう神宮の禰宜(ねぎ)に通じるとの俗説もあります。そばは、食物繊維も比較的多い食品です。古来の人々は経験からその効能を感じていたのでしょうか。
5、 金運から
金箔を打つ時、打ち粉にそば粉を使います。そば粉を使うと金箔の裂け目が
防げます。また金銀細工師は、飛び散った金銀の粉をかき集める時にもそば粉を使います。このような事例から、そばは金を集めるという縁起で食べるようになりました。
その他にも日本各地には、年越しそばにまつわる俗説は多々あります。
今年の大晦日はどんなおそばを召し上がりますか?
担当 食物栄養科 教授 管理栄養士 博士(食品栄養学) 食品加工学研究室 谷口裕信