2006年度10月号 NSTとは
食物栄養科の入学を希望される生徒さんの中にも、将来、栄養士として病院で働きたいと思っておられる方もたくさんおられます。しかし、病院において栄養士として働くと言っても様々な選択があります。その一つにNSTというものがあります。
NSTとはNutrition Support Teamの略で、それぞれの患者さんや病気の種類に対して適切な栄養管理を行うための栄養サポートチームのことです。そのチームの中には、栄養士はもちろん、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・臨床検査技師など各専門職が参加し、患者さん一人一人に最も適した形で栄養管理を提供するチーム医療のことです。
そもそもNSTは、1970年にアメリカのシカゴで始まり、その後、全米だけでなく、全世界に広まっていきました。そのきっかけとなったのは、栄養治療を 行うことにより治療効果への寄与や入院期間の短縮といったエビデンスが報告されるようになり、日本においてもここ数年で一般的になりました。では、今まで 医師は何をしてきたのかと問われるかもしれませんが、日本の医学教育において、栄養学といった単独の講義は存在せず、医療の現場に出てから自身で学びマス ターするのが一般的になっています。また、コストが高いのに、手間が掛からないという理由だけで、静脈栄養に頼ってしまうという現実がありました。こうし た背景により、日本では近年、NSTにより栄養治療に関して急速に効果を上げることができるようになりました。また、栄養治療によって、治療効果の改善お よび入院期間の短縮のみならず、医療費の節減、院内感染の防止、摂食障害の改善まで可能となりました。
栄養士を志すみなさんは、日本の医療の為に一生懸命勉強して下さい。
【 医科学研究室 吉川尚志 】