2005年度11月号 「読書の秋*食欲の秋」
夏の日差しにいささか閉口していた日々から開放され、目下、秋の夜長に読書を楽しみ、片手に切子のワイングラスといった風情が似合う今日この頃です。
金色の ちいさき鳥の かたちして
銀杏ちるなり 夕日の丘に
与謝野晶子
この和歌を読んだ文学少女が、黄葉の秋の情景を目の前に浮かべて、心の中で、風に揺られ舞い降りる銀杏(いちょう)に目を向け、思わず天を仰ぎ見てしまう場面が目に浮かびませんか?
ところで、中国原産の雌雄異株の落葉高木である「銀杏(いちょう)」は「公孫樹(いちょう)」と書くことがあります。これは、祖父が種子を蒔いても実がなる のは孫の代になるということを意味していて、祖父の尊称「公」を使って「公孫樹(いちょう)」と表したものです。また、「銀杏(いちょう)」は漢語の韻音 で「インキャウ」と読みますが、現在ではそれがなまって「イチョウ」となったようです。
「銀杏(いちょう)」の実と言えば「銀杏(ぎんなん)」ですが、雄株には房状の花が咲き、雌株にはV字型に膨らむ雌花が咲き、これが銀杏(いちょう)の実とな ります。「銀杏(ぎんなん)」と言えば、茶碗蒸し・炊き込みご飯・松茸の土瓶蒸しなど、秋の献立には一役買っている存在ですが、「銀杏(ぎんなん)」そのものも立派な主役となり、ちょっとしたお茶請けとして賞味していただくことができます。
みなさんは「塩煎り銀杏ぎんなん)」を召し上がったことがありますか?「銀杏(いちょう)」の葉がまだ新緑満載の初秋から、地面に落ちた実を収穫することができます。そして、水中果肉をとりのぞき、硬い殻に覆われた「銀杏(ぎんなん)」を得ることができます。そして・・・・・!!
【塩煎り銀杏の作り方】
(1)銀杏は、専用の銀杏割で殻を少しだけ割ります。(包丁のみねで、コンコンとたたいて、ひびを入れて剥くこともできます。) |
(2)厚手の鍋に塩を入れ、そこに殻を割った銀杏をいれ、5分間位煎ります。 |
(3)エメラルドグリーンの塩煎り銀杏の出来上がりです。 |
銀杏並木の黄葉を楽しみながら、銀杏(ぎんなん)を軍手で拾い集めましょう。
そして井戸端で銀杏の果肉をとり、いろりの釜で塩煎り銀杏をつくる、
なんと風流なことでしょう!これぞスローフードの世界です。
この秋は、ホクホクの甘い銀杏(ぎんなん)を頬張ってみてはいかがですか?
【 調理学第二研究室 佐藤幸子 】