長生きは人類の夢でした。日本は急速なスピードで人生80年時代となり、その夢が叶えられました。しかし、健康で長生きできるなら、これ以上の幸せはない のですが、現実には寝たきりや認知症などが、大きな社会問題となっています。寝たきりの原因には、脳卒中についで骨折が多く、この骨折に骨粗しょう症が深く関わっていることから、骨粗しょう症の予防が急務の課題となっています。
骨粗しょう症の予防には、その骨量の減少をいかに抑えるかが重要ですが、それ以前の若い時期の最大骨量を、できるだけ高めておくことがより重要です。
体という字は、以前は“體”とかきました。つまり、豊かな骨づくりこそ、健康な体づくりの基本なのです。しかし、近年、とくに若年期女性の痩せ志向や間違ったダイエットなどが多く、これらが将来の骨の健康に影響を及ぼすことが懸念されます。
さらに、日本は少子高齢化が進み、20年後には働き手2人で1人の高齢者を扶養しなくてはなりません。もっと心配なことは、働き手となる側の体力や健康状 態です。日本における食生活をみても、かつて経験したことの無い、いつでも、どこでも、何でも食べられるという飽食の時代となり、その上、ボタン一つ押せば用が済むという、便利な生活が当然のようになっています。子どもの頃からの食生活や生活活動は、その人の一生の健康を左右するといっても過言ではないで しょう。
子ども達が、心身ともに豊かに育つうえで極めて大切なことは、知育、徳育、体育とともに、それらのすべてに中心的に関わる食育(食生活)ではないでしょうか。
ますます少子高齢化する中、お互いに豊かで健やかな生活を営むために、骨が豊かな体づくりに心がけることが急務であるといえるでしょう。
【 戸板女子短期大学学長 江澤郁子 】