プリンを控えなさい?
「去年の健康診断で尿酸値が高いって言われて、それ以来、家で家族がプリンを食べているとき、僕はババロアで我慢させられているんだよ」
「へーそうなんだ、オレはプリンだろうと茶碗蒸しだろうと何でも平気だよ」
これは、西武新宿線の社内で耳にした中年サラリーマンの会話です。
みなさんはプリンとババロアのどちらが好きですか?
ところで、K社の発泡酒TAは“健康志向発泡酒”を標榜(ひょうぼう)し、プリン体99%カット達成!と高らかに謳(うた)っています。
プリンなら知っているけれど、“プリン体”って何?と思われる人も多いのではないでしょうか。
プリン体と痛風
血液中の尿酸が多くなって生ずる病気に痛風があります。
細胞内で遺伝子などとして働く核酸(DNAやRNA)や細胞のエネルギー源ATPが代謝されるときに、核酸やATPに含まれるプリン塩基という物質(これをプリン体という)から尿酸が作られます。
この尿酸はたいへん水に溶けにくく組織の中で結晶化して関節に炎症を引き起こします。
これが痛風です。
つまり、尿酸値が高いひとが控えなければならないのはカスタードプリン(custard pudding)ではなく“核酸を多く含む食物”なのです。
食品のプリン体
食品のほとんどは動植物の体だったものであり、プリン体は遺伝子の成分ですからほとんど全ての食品に含まれます。
代謝の活発な組織には多く含まれ、レバー(肝臓)には肉(筋肉)の3倍のプリン体が含まれます。
また、栄養を貯蔵する組織である穀類や豆類には少なく、とんでもなく大きな細胞である鶏卵では、単位重量あたりで言えば、ほとんど含まれません。
ではビール・発泡酒はどうでしょうか。
痛風は、エネルギー(カロリー)と高脂肪、高タンパク質食品の摂取が多く、飲酒を日常的に行っている人に多く見られる病気です。
そして、尿酸値が高いと、“ビールを控えなさい”といわれます。このため、上記のような低プリン体発泡酒なるものが開発されたわけです。
しかし、ビールのプリン体含量は白米のご飯の1/2~1/3程度、肉の1/20程度で決して多くはありません。
“ビールはプリン体が多い”ではなく“酒類の中では多い”ということです。穀類のプリン体は少なくても、麦芽は麦が芽を出して活発に生長している状態ですから核酸が増えるわけです。
18歳前後の女性100人弱に、「カスタードプディング(プリン)を食べ過ぎると尿酸が増え痛風になる」は、○か×かと聞いたところ、何と4人に1人は○と答えました。お父さんを笑えませんね。
pudding(プディング、プリン)
(1) 牛乳と卵を混ぜて蒸すなどしたデザート
(2) 穀類をベースに蒸したり焼いたりした食べ物
【 栄養生化学研究室 堀坂宣弘 】