ブランドプロデュース論・演習を担当する大滝です。
1年生前期は「ブランドプロデュース論」にて、ファッションブランドを立ち上げるにあたってのコンセプトワークの手法を説明し、学生各自に“自分のブランド(マイブランド)”を企画してもらいました。
それを受けて後期授業の「ブランドプロデュース演習」を選択した学生は、実際に具体化していく演習授業となります。
▸「ブランドプロデュース論」前期の様子はコチラ
まずは、前期のブランディング資料を再考察し、それを軸にマイブランドのポジショニング及びシーズンテーマの決定、そしてそのシーズンイメージの中に入り込むスタイリングやファブリケーションを考えていきます。それによりシーンとスタイリングそして素材がFIXすることになるため、次はアパレルデザインを考え商品企画書を作成します。
▼実際の企画書です。ブランドのイメージマップも自分たちで作成します。
ここまでは商品企画授業では一般的な内容だと思いますが、次に学生達には立体的なビジネス要素を理解してもらうためにマーチャンダイジング及び実際のミニマム生産ロットにて販売価格と数量も設定してもらいました。そうすることにより商品の仕入金額と商品コストが算出できるようによります。
という流れで実践的にブランドを設計するためのクリエイティブ面とビジネス面を体験することができました。
次のフェイズでは“じゃ皆さんが考えたマイブランドをどうやって知ってもらって、どうやって売るの?”というテーマに移っていきます。
最終的に700万円を事業資金として、商品コスト、セールスプラン、プロモーションプランの具体案を詰めながらどのぐらい経費がかかるんだろう?と学生達には悩んでもらいました。
その集大成が本日のプレゼンテーションです!
学生達がプレゼンする外部講師の方は前期のブランドプロデュース論で学生達のブランディング資料を見て頂いた大滝の後輩でもある現役ブランドプロデューサーの小松氏に再度お越しいただきました。
▼個人ブランドBELINDA、Felan Maisonと2つのブランドをプロデュース及び運営している小松氏
前期はコロナ禍のためオンライン授業であったため小松氏としても学生達に触接会えず残念がっておりましたが、やっとご対面となった次第です。
今回は授業課題の総合評価とは別枠にて、“現役ブランドプロデューサー賞”的な観点にて、
“このブランド売れるかもしれない!?”というテーマで、学生作品をいくつか選んでいただくことになります。
学生達は緊張していましたが、パワーポイント資料をプロジェクターに投影しながら、一人持ち時間2分の売り込みプレゼンをしていきました。
これは結構レベルが高い内容です。
自分が考えるブランドイメージや商品構成そして狙うターゲットにどうやって訴求していくのか?を第3者が分かるようにたった2分間で語るということになるからです。
そしてプレゼン後一人一人に小松氏からの良い点・これからブラッシュアップした方が良い事柄をコメントして頂き無事終了となりました。
小松氏からREINA賞として6人の学生が選ばれましたが、その中で“投資したいブランドNo.1”として選ばれた学生は、“伊藤梨央さん”です。
▼伊藤さん考案のブランド「EREMO.」商品企画書(一部)
おめでとうございます! ここまでの道のりは大変だったと思います。
伊藤さん本人の感想を掲載したいと思います。
実際自分のブランドを企画してみていかがでしたか?
伊藤 「自分で1から作り上げていくことの難しさと大変さ、時間のかかり具合いなどを体験して知ることが出来て良かったです。 自分のイメージにあった画像を探してそれを使って表現したり、それに合う服のイメージや素材を作ったりなどと一つ一つの過程の重要さを知った上に、出来上がった時の達成感とそれを実際に認めてもらった時の嬉しさなど沢山のことを知り、感じることが出来ました」
ブランドプロデュースにはどんな能力が必要に思えましたか?
伊藤 「自分のイメージをしっかり持つことや、妥協せず諦めない心を持つこと。とことん自分のこだわりを持つことが大切だと思いました」
勉強として楽しかった事柄は?
伊藤 「本当に頭使うし、時間もかかるし、相当大変だったけれど結構全体的に楽しくて、前期のプロデュース論にはなかったMD表の作成や平絵などは、実際にプロデュースしている気分になれて楽しかったです。また、はじめの頃は全然平絵が上手く描けなくて、頭の中では完璧なデザインがあってもそれを表現出来ないことが悔しかったけれど、描いていくうちに上達していくのが実感出来るくらいまで安定して描けるようになって嬉しかったです」
ブランドをプロデュースするうえで大変だったことは?
伊藤 「自分のイメージや雰囲気に合う画像を選ぶことと、私はブランドの雰囲気がより伝わるようにスライドのデザインや画像の配置にもこだわったので、その部分がとても大変でした」
小松さんにプレゼンしていかがでしたか?
伊藤 「小松さんからのコメントで、私のマイブランドのコンセプトの『今日、かっこいい魅力的な女性であるために。』には、”かっこいい!といっても色んなかっこいいがあるの思ったので、その色んなかっこよさを日替わりでセレクトすることで、ファッションを楽しむという意味を込めて『今日』というワードを取り入れている” というコンセプトの裏を活かして、日替わりのコーディネートを実際に組むことでより伝わるようにしてみるといいというアドバイスと、メインアイテムであるニットアイテムでより独自性を出せると良いというアドバイスを頂けて良かったです。 頂いたアドバイスからブランドコンセプトや、そのブランドの強みを更に追求することが大切だということが分かりました」
大滝 「伊藤さんは服飾系の高校を卒業したわけではないので、絵を描くことも最初から練習して行きましたが、テキストの平絵を模写したりして物凄く努力しているのを見ていました。でもいつしかうまく描けるようになっていましたね。うまい絵を描くのは練習につきますね」
それでは、他の学生たちの感想もいくつか紹介したいと思います。
「初めて自分でブランドをプロデュースしてみて、1からスタイリングを考えて絵を描いてMD表やセールスプロモーションプランなども考えて自分のブランドができていくうちに楽しくなっていきました。実際はこんなに楽じゃないと思うけれどとてもいい体験になったと思いました」
「自分のブランドをつくることは難しいと思ったけど、授業を受けていくうちにブランドができていって、達成感があった。MD表を作ることが楽しかった。」
「将来自分がブランドを設計した時の売り込み方や、周りとの差の付け方、埋もれない方法を学ぶ事ができた。」
「最初は思った通りのデザインだったりアイデアが思い浮かばなくてどうしようかとずっと悩んでいたのですが、何度も描き直したり、見返したりして理想のブランドを作り上げることができました。ブランドを作り上げるのはとても大変で職業として日々活動している方々の凄さを改めて感じました。
そして、1番大切だと思ったのは想像力です。 やはり、自分オリジナルのブランドなので個性を出していくには他の人とは違ったアイデアを生み出す想像力が大切だと思いました。 また、自分の考えをちゃんと持っているというのもブランドをプロデュースする上でとても大切だと思います。」
「自分の好きな世界観を表現できてとっても楽しかったです。ますます自分のブランドを作りたいと思いました。それには、まず発想力それから生地や形の知識、またトレンド察知能力が必要だと身に染みて感じました。」
「どのようなブランドにするか考えるまでがとても大変で、どんなこだわりを入れたいかを何度も考え直しました。平絵を描くだけでなく、セールスプロモーションや価格帯、素材まで全て考えなくてはならないので、分からないことがあった時には積極的に調べたりした中で沢山のことを学べたと思います。大変ではありましたが、どんどん自分のブランドが完成していくことがとても楽しく、やりがいがありました。」
「ざっくりと自分のブランドを持ちたいなという考えがあったのでこの授業をとりました。実際に1から自分のブランドのコンセプトや平絵、企画書など考えることでブランドを作るための手順や方法を学べ、自分の憧れを形にすることが出来た気がしてとても楽しく企画できました。」
「初めはこれで大丈夫なのかなと心配な気持ちで進めていきましたが、授業を進めるうちに内容がしっかりと深まっていったのでブランドを企画している実感が湧きました。 ブランドにはコンセプトや、イメージマップ、ポジショニングなどが重要ということがわかり、ブランドを統一させるためにしっかりとイメージが出来ていないとブレてしまう部分が出てきてしまうなと感じました。 難しいこともたくさんありましたが、完成に近づくにつれて楽しくなりました。」
「自信を持ちながら、インスピレーションを常に受けることが重要だと思った。自分の信念を貫きすぎると周りの意見やトレンドが見えなくなってしまう。かといって周りに影響を受けすぎると個性が無くなってしまう。二つの要素をうまくバランスさせながら、唯一無二のブランドを作り上げていく必要があると思う。」
いかがですか? とても濃い感想ですね。
一度経験しないとなかなか出てこない内容になっていると思います。
昨今SNSを通じてフォロワーが多い方々がブランドをプロデュースをする事が流行って来ていますが、一過性ではないファッションブランドをプロデュースために必要な事柄を段階的に学生たちには体験してもらいました。
彼女たちはこの授業の第一期生となるのですが、将来ファッションブランドプロデューサーとして是非とも羽ばたいて欲しいと願っています。いつでも相談に乗りますよ!
大滝 秀一